
子どもから大人まで知らない人はいないレゴブロック。私も大好きで40歳を超えた今でも自分用に購入しています。
そんなレゴですが倒産の危機に陥っていたことをご存知ですか?
任天堂がファミコンを販売すると子どもはレゴからファミコンに遊び道具を変えていきました。
そして世界各国でレゴの特許が切れ、安価な模造品が他のメーカーから販売されるようになりました。
遊びの多様化、そして模造品の販売などによってレゴは倒産のピンチを迎えます。
そんな倒産のピンチをどのようにして乗り切り、再び世界一の玩具メーカーとして地位を取り戻したのか。
この本には当時のCEOなどのインタビューも交えながら、レゴという会社の経営について学ぶことができます。
こんな人にオススメ
- 経営をしている方
- レゴ好きな大人
- ブランディングに興味のある人
オススメ度 | ★★★★☆ |
---|---|
ページ数 | 376ページ |
読書時間 | 3時間~4時間 |
レゴ 競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方
私は1978年生まれですが、小学校4年生ぐらいまではレゴで育ちました。学校から帰ってくると家でレゴ、友達の家でレゴ、たまに鬼ごっこが遊びの中心でした。
そんな私の生活を一変したのはファミコンの登場です。自宅での遊びや友達の家での遊びが完全にレゴからTVゲームに変化していきました。
世界中で私のような子どもが増え、レゴの売上は徐々に落ちていったようです。
さらにレゴブロックの特許が世界中で切れて、各メーカーがレゴブロックと互換性のある安価な製品を販売していきます。
レゴブロックの需要の減少に安価な類似製品の登場。これで売り上げを落としていくレゴですが、この時点でレゴには危機感がなかったといいます。
その危機感がない状態は倒産直前まで続き、リストラが行われるようになって気づきました。経営者の危機感と労働者の危機感は肌感覚がかなり違う一例だと思います。
新事業とスター・ウォーズ
1998年に高級音響メーカーの「Bang&Olufsen」を再生を手掛けたポール・プローマン氏をCOOに招いて会社の再建を託します。
プローマン氏が手掛けたのが脱ブロック事業と新規事業です。レゴの代名詞「レゴブロック」だけに頼らず、テレビゲーム開発やテレビ番組の制作、そしてレゴランド事業など事業の多角化を勧めていったのです。
そしてプローマン氏の最大の功績が「スター・ウォーズシリーズ」の発売です。今までは当たり前になりつつある、レゴと映画などの作品のコラボはこのスター・ウォーズから始まりました。
しかし、このスター・ウォーズシリーズの発売はレゴでも相当揉めたそうです。
レゴは長年、子供向けの玩具メーカーとして、「暴力的なものを想起させる世界はつくらない」という不文律を守ったきた。しかし、宇宙戦争をモチーフにしたスター・ウォーズはこのルールから完全に逸脱している。
このスター・ウォーズとレゴのコラボですが、結果的に過去最高の売り上げを叩き出すほどの大ヒットとなりました。
しかし、本でも書かれていますが、スター・ウォーズの映画が公開される時期にはレゴの売上が上がり、公開されない時期は売上が下がるという諸刃の剣になってしまったのです。
残念ながら、プローマンの繰り出した施策の多くは、レゴにとって時期尚早だった。すべき決断は変わらないのに、タイミングが違うと結果が伴わない。しかし、いつが適切なタイミングなのかはやってみなければ分からない。マネジメントの難しさだ。
この言葉の通り、レゴはスター・ウォーズの売り上げとは反対に新事業の多くを失敗する結果になりました。
リストラと原点回帰
2004年に日本円でおよそ310億円の赤字となり、身売りの噂まで流れるようになったレゴ。
そんな中、CEOに就任したのはレゴに入社3年目、35歳のヨアン・ヴィー・クヌッドストープ氏です。
プローマン氏とは異なり、クヌッドストープ氏はレゴ内部の人材です。外部の人間と内部の人間のどちらの方が優れているかは結果論となってしまいますが、JALを3年で再建した稲盛和夫さんの言葉がこの本で紹介されています。
外部から招聘された経営者はその会社固有の価値観に引きずられない。特に、その企業文化が経営にマイナスの影響を与えているとき、それを断ち切るのは外部の人間のほうがふさわしいこともある。中の人間が気づかない課題も、外の人間から見るとはっきりと分かる。
クヌッドストープ氏はレゴの再建のために1,200人をリストラ、さらに新事業として立ち上げていたテレビゲーム事業やテレビ番組の制作から撤退、レゴランドを投資ファンドに売却するなどして、徹底的に赤字の原因を排除していきます。
経営危機から回復したすると、レゴに必要なことは創業者の「子供たちには最高のものを」という理念、「最大ではなく最高を目指す」という価値観を掲げます。
デザイナーの意識変革やユーザーである子どもの意見をこれまで以上に取り入れることで「レゴブロック」のブランド力を取り戻していきます。
そしてコロナ禍に入り、レゴは過去最高益を出すなど、玩具メーカーとして世界一の地位を取り戻しています。
最後に
この本ではレゴが経営不振に陥ってから復活するまでの出来事が詳細に書かれています。
世界一の玩具メーカーがどのようにして経営不振に陥って、そしてどのようにしてブランド力を取り戻していったかが詳しく書かれているので経営者の方が読んでも面白いと感じると思います。
また多くの人に認知されている「レゴ」というブランドですが、そのブランドを愛してくれるファンの方といかにコミュニケーションを取り、さらにファンを増やすためにどのような手法を講じてきたのかなども書かれています。これはブランディングを手掛ける人にとっては良いヒントになります。
その他、レゴとプログラミングを組み合わせた「レゴブースト」などの開発経緯、大人に人気の「レゴアイデア」の誕生秘話、レゴを会議の場に持ち込んだ「レゴシリアスプレイ」などの話も詳しく書かれていて、レゴの素晴らしさを改めて感じられる1冊になっています。
レゴ好きの方からブランディング担当の方、さらには経営者の方までレゴを通じて色々なことが学べる1冊になっています。